8.5 授業とネット動画授業/映像授業の受けすぎに注意

更新日 2021年5月16日


アウトプット学習(問題を解く)をしないと定着しない

「聞く」「見る」の学習を『インプット学習』と言います。

例えば、先生の話を聞く/動画を見る/参考書を見るなど、いわば受け身の学習です。

それに対して「問題を解く学習」を『アウトプット学習』と言います。



ちゃんと授業を聞いてたのに、または何回も教科書に目を通したのに、いざテストになると問題が解けない、という経験はないですか?


パデュー大学が、学生180人に協力してもらい、「文章を読んで覚える学習法」と「テスト形式での学習法」と、1週間後にどちらが内容をよく覚えているか、という実験をしました。

その結果、同じ時間を勉強したとしても、テスト形式の学習の割合を多くするほど、1週間後に覚えている率が高いことが分かりました。



これは『テスト効果』と呼ばれています。

つまり読む(聞く)だけの学習だけをしても定着率は低く、テスト形式で問題を解きながら覚えないと定着率が上がらない、ということです。




またアンケートでも、東大合格者の85%が「話を聞く/参考書を見るより、問題を解きながら覚える」を意識していました。



東大生はテスト効果を知っているか、あるいは経験としてテスト効果、つまり問題を解かないと覚えないことに気付いたのかもしれません。




またアメリカ国立訓練研究所が『ラーニングピラミッド』という勉強方法別の定着率を発表しています。

これによると「聞く/見る/読む」の定着率は5~20%に過ぎず、「問題を解く/実践する」の定着率は75%になっています。






インプットとアウトプットの最適な比率は3:7

諸説ありますが、一説によるとインプットとアウトプットの最適な比率は3:7と言われています。
(今後論文を調べて追記します)

つまり授業を聞く、ネット動画授業を見る、参考書を読む時間が3時間あったら、問題集を解く時間が7時間必要、ということです。

さらに試験直前期になると、インプットとアウトプットの最適な比率は1:9がいいと言われています。




マジメな学生ほどインプット学習が増える罠

多くの人にとっては、「解かないと覚えない」なんて当たり前のことで、「そんなこと知っているよ」という思いになるかもしれません。

ですが、私が接してきた少なくない数の受験生が、勉強というと「先生の話を聞きながらノートを取ること」だと思いこんでいました。

小さいころから学校の授業で勉強しているとそういう感覚になってしまうのかもしれません。

「自分のアウトプット学習の時間比率が70%以上になっている」と自信を持って言えますでしょうか?



マジメな学生ほど、学校の授業を聞き、塾の授業を聞き、ネット動画授業を見る、とインプット学習をついつい重ねてしまいます。

その結果、アウトプットの時間が不足します。

するとマジメに長時間勉強しているのに成績が伸びないとか、塾にたくさんいっているのに成績が伸びない、ということがよく起こります。

本人は一生懸命やっているからこそ、非常にもったいないことです。


難関大合格者は、これを知っているから、独学を中心とした勉強を選ぶ傾向が強いのかもしれません。
<6.1 塾に頼る人は合格率が低い>


努力しているのに成績が伸びないなと思ったら、インプット学習とアウトプット学習の比率を見直してみてください。




ネット動画授業/映像授業は初学か、分からないときだけ

ネット動画授業はたしかに分かりやすいです。

学校の授業よりもはるかに分かりやすい授業が、自分が受けたいときに受けられる、というのはとても便利です。

初めて学ぶ単元や、苦手教科の入口としては非常に有効だと思います。

ただし、動画で華麗な解説を見て理解した気になっても、いざ自分の手で解こうと思うと思った通り解けないことは多いです。

従って、中級者以上はアウトプット学習時間の確保が重要になります。


チンプンカンプンだった科目が、ネット動画授業で理解できたとすると、「もっとネット動画授業を受けよう」と思いがちですし、塾のチューターも「もっと動画授業を受けなさい」とススめてくるかもしれません。

ですがそこをぐっと抑えて問題集に向き合う時間を増やしてください。


問題を解く中で分からないところや不安なところが出てきたら、そこだけネット動画授業を見るのはいいと思います。

どれだけ分かりやすい授業を受けても、問題を解かないと成長しないということを覚えておいてください。



本コラムのまとめ

  • 授業を聞く/参考書を読むという『インプット学習』だけでは定着率は低く、問題を解く『アウトプット学習』の割合を増やすことで定着率が高くなる。
  • インプットとアウトプットの比率は3:7、試験直前は1:9がいい。
  • 多くの受験生は、学校/塾/ネット動画授業などでインプット学習に偏りすぎて、アウトプット学習が不足している。